役員インタビュー

尾﨑 治夫 副会頭

略歴

1977年 順天堂大学医学部卒業

1979年 順天堂大学医学部循環器内科学講座入局

1987年 順天堂大学医学部循環器内科講師

1990年 おざき内科循環器科クリニック開設

1990年 順天堂大学医学部循環器内科非常勤講師

2002年 東久留米医師会会長

2015年 東京都医師会会長

2016年 日本医師会理事

4年間の変化と今後の展望を俯瞰できる
非常に有意義な医学会総会

社会の中での位置づけなど広い視野で考える機会

天谷 雅行 副会頭

──東京都医師会を代表し、また開業医のお立場として医学会総会をどのようにご覧になっておられ、意義を感じておられますか?

──東京都医師会を代表し、また開業医のお立場として医学会総会をどのようにご覧になっておられ、意義を感じておられますか?

医師会の皆さんは自分の専門領域については学会に入会しておられ、専門領域のパイプはある程度持っていらっしゃると思います。しかし、全体の流れでいえば、医学会の中で各学会が、どういう水準でどんな内容でやっているのかはなかなかわからないですよね。毎回医学会総会に参加することによって、4年間でどのように変わってきたか、今後の展望はどうなるのかがわかるという意味で、私どもには非常に意義があると思っています。

──ポストコロナでの開催になることを願っていますが、パンデミックを経験したあとで医学会総会に参加する意味、参加されるお気持ちに変化はみられるでしょうか?

──ポストコロナでの開催になることを願っていますが、パンデミックを経験したあとで医学会総会に参加する意味、参加されるお気持ちに変化はみられるでしょうか?

このコロナに関して、感染症、公衆衛生、救急、集中医療医など関係する先生方はいろいろな発言をされていますが、これだけに集中するのではなく、たとえば循環器には心筋梗塞、脳神経には脳卒中など、守らなければいけない通常医療があることを忘れてはいけないと思います。また専門領域のみに従事するばかりではなく、ジェネラルに見るとか今の社会の中でどういう関連をもって見るとか、そういう視点が大切になってくると思います。

医学会総会というのはそういう意味でも、社会の中でどういう位置づけであるのか、もっと広い視野で考える機会ととらえていただきたいです。

医師会の先生方、コメディカル、学生は
医学会総会で学会や研究・アカデミアの方向性を学び、臨床に生かすべき

──副会頭として、医学会総会に対して抱負やお考えはありますか?

これまでどの医学会総会でも、開催地の医師会長が副会頭になってこられました。普段、学会や研究・アカデミアがどんな方法に進んでいるか、疎くなっている先生が多いので、そういう先生方にいかに参加していただくか。我々のように診療所や一般病院で診療している先生・スタッフ、コメディカルを養成している学校の学生など若い人がたくさんいます。そういう方々に呼び掛けて、今の日本のレベルはこのくらいで、こんなことを目指している、ということを学んでほしいと思います。

これからは、今回のテーマでもある「ビッグデータ」を活用していく時代になるわけですから、世の中の動きを、若い人からベテランまで、医学会総会の雰囲気・内容を味わっていただいて、いろんな意味でリフレッシュして、次の実地臨床の中に取り入れられるものは取り入れていく、ぜひそういう機会にしていただき、できるだけ多くの人に参加していただきたいと考えています。

──若い方にも参画していただくためU40、また男女共同参画等委員会など、これまで以上に画期的な医学会総会になる印象もありますし、ポストコロナということでいつもより関心が高まっていると思いますので、その中で開く医学会総会が実り多いものにしていきたいと思っています。
先生はコロナ対応で毎日大変でいらっしゃいますが、東京都医師会の立場として向き合う対策や今の医療政策についてお考えがありましたらお聞かせください。

感染症・パンデミックというのは、一種の国防であり、国家の安全保障ですが、政治的にそこが弱いですね。アメリカならCDC、台湾にも韓国にもセンターなど、ある程度独立した感染症対策を考えて推し進める機関があります。日本にもそのような機関が必要です。

感染症は、ある程度まで増えたら倍々に指数関数的に増加する。これは一種の数学的なものであり、人と人の接触がこのくらい続けばこのくらい爆発するなどデータがあれば必ずわかります。ところが、今はいいところだけ取ってしまう。

例えば、感染が収まってきて、「これをしていい」なんていう話になると、盛んに分科会の意見を聞く。しかし、経済を回したいからと、GoToトラベルなどを実施する時は、分科会の意見は聞かない。いいように利用して、自分たちで決めて、最後には「専門科の先生方の承認を得てやります」という形式だけだと感じます。

もっと水際対策をして感染を抑えることを、短期間2~3週間できちっとやれば、感染者は下がるんです。そうすれば経済損失も軽減できる。

それから、既存の医療者を総動員で対応するなどというが、なぜ自衛隊を使っていわゆる野戦病院的な施設を作らないのか、と思いますね。ノウハウを持っていますよ。逆に(ワクチン)大規模接種などは自衛隊ではない、医師や看護師を当てればいいと思います。

実際にコロナの診療に当たるには、ワクチンを打っているとはいえブレイクスルーで2~3割は感染する状態にあるため、防護服の着脱テクニックを知っていたり、チームプレーがわかっている人でないと通用しない。そこには、ノウハウをもった自衛隊を含め、感染症をコントロールできる人の指導をもとに訓練しながらでないと対応できないのです。“貴重な人”を使う場所を間違えている。悲惨な状態です。

コレクション、音楽、読書…多彩な趣味でリフレッシュ

天谷 雅行 副会頭

──ご多忙な中での先生のリフレッシュ方法を教えてください。

コレクションの趣味がいろいろありますよ(笑)。たとえば、スポーツカード。アメリカが本流ですが、アメリカンフットボール(NFL)・野球(MLB)・バスケットボール(NBA)・アイスホッケー(NHL)の有名な選手のカード…サイン付き、とか。昔の選手のカードだと非常に高額で取引されます。アメリカはちゃんと相続もできるんですよ。今は忙しいので収集はしていませんけどね。あとは、音楽を聴いたり、本を読んだりするのが大好きです。

──音楽ではどういった分野がお好みですか?

10代後半から20代は、当時のウッドストックとかロックに凝っていました。30代は、ブルーノートとかジャズ。それからは、クラッシックとか演歌とか・・・なんでも幅広く、コンサートも行きますよ。

ドクターでバイオリンやピアノを演奏されるなど、いろんな人がいらっしゃいますね。僕は指が短いので(笑)ピアノはちょっとかじった程度で。小さい頃は、アコーディオンを5~6年やっていました。

「実現する医学の近未来」を観て、希望をもってほしい

天谷 雅行 副会頭

──医学会総会では、なるべく多くの方に医療について知っていただきたいです。一般の参加者にコメントいただけますでしょうか。

──医学会総会では、なるべく多くの方に医療について知っていただきたいです。一般の参加者にコメントいただけますでしょうか。

医学会総会には5年先10年先にこういう医療になるのではないかというものが展示されます。あと何年かするとこんな展開が起きるんだ!と、良い意味でいろんな情報が入りますから、明るい材料になっていくと思いますね。

現実では、病院に行くと待ち時間が長い、挙句の果てに診察は何分かで終わっちゃう、という不満もまだまだあると思いますが…これからはITを使ったり、AIを使った診断で正確なものが出てくるんじゃないか、とか。

がんの診断も血液1滴で何種類ものがんがわかるとか、治療法もかなり生物学的薬剤、オプジーボとか、遺伝子分析をすると効く薬のタイプがわかったりするので、副作用が少なくてピンポイントで効く薬を個別に“オーダーメイド”で対応していく、など…いろんなことがありますね。

「実現する近未来」が展示を観るとわかると思うんです。そうしたら、もう少し長生きして、あぁいう治療を受けたいとか、希望も出てくると思います。そんな機会としてとらえていただけるとありがたいですね。

──これから医師になりたい人、医師を目指す人、目指さない人にも理解をしてもらいたいので“模擬手術”などの体験型展示を考え、模索しています。

東京都医師会でも将来医師を目指す高校生を集めてイベントを開催していて、超音波のシミュレーションや内視鏡を覗ける教材で体験して貰っています。

こうしたイベントを医学会総会で実施すると、医学に興味を持つ良いきっかけになりますね。

──最後に、お話し足りないことはありますか?

頭のいい人が医師になると言われがちですが、僕は“人間が好き”とかコミュニケーションのとれる、人間に興味があって、やさしい心を持った人こそ医師になってもらいたいです。頭がいいことはさほど重要ではなく。何故ならこれからはAIなどがやっていきますから。

最後に残るのは、AIで出た診断結果をいかに患者さんにうまくやさしく伝えられるかですよ。これは“コミュニケーション能力”なんです。天才的に頭がいいんだけれど無口、腕はいいんだけれど喋らない...そういう人ではなく、「人間力」を持った人に医師になってほしいですね。

聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

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