役員インタビュー

間野 博行 財務委員長

略歴

1984年 東京大学医学部医学科 卒業

1986年 東京大学医学部第三内科 入局

1989年 米国セントジュード小児研究病院生化学部門 留学

1991年 東京大学医学部第三内科 助手

1993年 自治医科大学分子生物学講座 講師

1995年 自治医科大学分子生物学講座 助教授

2001年 自治医科大学ゲノム機能研究部 教授

2013年 東京大学大学院医学系研究科細胞情報学分野 教授

2016年 国立がん研究センター 理事・研究所長

2018年 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター長

今の医学・医療の最重要課題
「健康をデザインする」を推進する機会に

医療者だけではなく、ビジネスマン・学生・子どもさんが参加することに意味がある

間野 博行 財務委員長

──総会まであと1年2ヵ月に迫ってきました。2月1日からは登録も開始されています。今回は財務委員長の重責を担われている間野先生にお話をお伺いしたいと存じます。まず医学会総会の意義について、先生はどのようにお考えでしょうか?

──総会まであと1年2ヵ月に迫ってきました。2月1日からは登録も開始されています。今回は財務委員長の重責を担われている間野先生にお話をお伺いしたいと存じます。まず医学会総会の意義について、先生はどのようにお考えでしょうか?

医学・医療には医師ではなく、薬剤師、看護師などコメディカルの方々が多岐にわたって従事しています。

医学会総会は、最新の医学やこれから医学がどう変わっていくのか、医療がどう変わっていくのかを学ぶ一番良いチャンスです。もちろんcovid-19の問題は大きいですが、実は今の医学の一番大きな潮流は、自分の健康をどうデザインするか、健康を科学するか、自分自身の遺伝情報に応じてどういう風に生活習慣を作っていけば安全に健康に長生きできるか、ということをそろそろ実現し始めるタイミングなんです。

そのためにはビックデータはもちろん必要ですが、医師とか製薬会社という垣根を越えて、様々な分野の専門家、たとえば人工知能の会社やneural networkを開発する会社など、今まで医療に参加して来なかった人たちも前面に出てくる時代になっています。

私はがん研究が専門ですが、まさにがん治療は、日本では2019年にがんのゲノム解析に基づく治療が保険で認められるようになりました。これをきっかけにして、がん以外の、たとえば膠原病・難病に広がっていくのではないでしょうか。

今の医学・医療の最重要課題は「健康をデザインする」ということだと思います。そのような流れを推進していくために、医師やコメディカルの方たちがこの総会に参加して視野を広げる良い機会になり得ます。言い換えれば『医療・医学の祭典』ともいえるかもしれません。

──今度の総会は医学・医療の大事なターニングポイントになる、ということでしょうか? 医師や医療従事者が一体となって取り組んでいることを一般市民が認識して、自らが健康をデザインするということが大切になりますね。

本当にそう思います。そういう観点から、今回の総会、特に展示・博覧会はたくさんの方々にご来場いただきたいため、従来と違って会場も【丸の内・有楽町エリア】と利便性も非常によい場所にしました。青木展示委員長とも相談して「がんゲノム医療」のテーマブースも作ります。医療者だけではなく、ビジネスマンや学生、子どもたちが参加することに意味があると思っています。

財政的には健全な運営が見えてきた状況に

──財務委員長としての役割などについてお話をお聞かせください。

財務委員長としては、今回の医学会総会を経営的に健全にオーガナイズしていくことが自分の最大の役割だと認識しており、先程もお話ししましたが、旧来の医療の分野から離れていた方々にも参加を促すことも実施しています。

青木展示委員長、南学学術委員長と協力して、従来参加していただいていた分野の企業だけでなく、新しい分野の企業にも広く参加していただきたいと活動しています。

──今回は、学術と展示がより一層一体化したものを目指しているということですね。この社会情勢の中で健全な経営を目指すのは困難なことも多いと思いますが、財政的な見込みは如何でしょうか?

確かに厳しいです。しかし、会頭、準備委員長を含む組織委員長の先生方、あるいは各方面からのご努力や団体、企業からのご支援があり、先が見通せる状況まで差し掛かってきたと思います。

国立がん研究センター がんゲノム情報管理センターを高い目標を持ったAIメディカルセンターに

間野 博行 財務委員長

──それを伺って少し安心いたしました。ここで、先生のご専門のお話を伺います。ご専門は応用ゲノム科学、生物分子化学で“がん患者の救世主”のような方で、紫綬褒章や日本学士院賞もお受けになり、日本のゲノム研究を牽引する最高責任者として重責を担っておられます。先生の治療によって救われた命は数えきれないほどだと思いますが、そのあたりのお話をお聞かせください。

私は髙久先生の下で血液を専門として医師のキャリアをスタートしましたが、たまたま自治医大にいた時に肺がんの遺伝子をみつけました。すぐに薬が作られ何十万人の命が救われました。

──先生は第三内科のご出身なので臨床医かと認識しておりましたが、どのような経緯で国立がん研究センターの研究所長になっておられるのでしょうか?

私自身、まったく予想していなかったのですが、6年前に突如としてここの研究所長のお話をいただきました。まだ自分で研究をしたかったので悩みましたが、髙久先生の「もう研究はいいでしょう、日本のために尽くしなさい」との鶴の一声で決心しました。

ここへ来てからは視野が広がりました。がんの薬を作るのは紛れもなく製薬会社ですし、診断薬を作るのは検査会社です。新しいがんの薬、新しい診断法を作っていくにはAI人工知能の会社とも連携していかなくてはならないのですが、私はむしろここを医療人工知能(メディカルAI)のセンターにしたいと思っています。多分野の企業と知り合うようになって視野が広がりました。

──医療や患者さんへの想い等を話しいただけますか?

僕は当初血液内科医として白血病細胞の増殖メカニズムを研究していましたが、自治医科大学で講座を持った時に「業績は上がったけれども、自分の研究で実際に患者さんを救えていない」ことに思い至りました。せっかく講座を任されているので患者さんを直接救う研究がしたいと感じました。

患者さんのがんの組織からがん原因となる遺伝子を直接スクリーニングする技術の開発に2年かかりましたが、その技術を完成して肺がんを調べたところ、異なった2種類の遺伝子がくっついてがんを発症することがわかりました。それまでの常識にはなかったことでしたがそれは事実でした。そこからは人生がジェットコースターに乗るように目まぐるしく変化しました。薬をつくったのですが、アジアの治験は韓国で実施され日本は治験対象に入っていなかったのです。そこで日本で実施できるような組織づくりをし、最終的に日本で保険適用になった時は本当にうれしかったです。

その後東大に移り研究を続けて、今は国立がん研究センターへ移りました。また保険診療下のがんゲノム医療を確立するのには苦労をしました。

──ゲノム医療という言葉が世に知られるようになってきて、それを目指す若い研究者を育てることも先生の重要なお仕事でいらっしゃいますね。

若い研究者の育成は最も重要な課題の一つです。若い人を育てるには、一つにはサクセスストーリーを持たせるということです。

国立がん研究センターはがんのサンプルは沢山あるので、是非それを利用して頑張って研究していただきたい。私の役割はここを世界と戦える日本の砦にすることだと認識しています。新しい研究はたくさんできていますし、実際かなりうまくいっていると思っています。そこからはサクセスストーリーができてきますし、それらのオリジナリティーを持った若い研究者をサポートする必要性を強く感じています。

また、メディカルAI開発を促進する手段は二つあり、一つ目は若手のAI研究者を一同に集めてAIメディカルセンターのようにすること、そして二つ目は大きな目標を与えることです。例えば自動車の自動運転を例にとれば、自動運転という大きな目標に向かって高度な要素技術を結集するわけです。医療でいえば患者さんの診断名と投薬法を行う自動診断AIという目標に向かって知識と技術を駆使する、というように高い目標に向かって突き進むことが成果を上げる秘訣であると思います。

これからはAIを活用した医療が必須になりますが、この分野で日本は大きく遅れを取っています。この分野に注力する必要性を強く感じます。

世界的に意味がある高度なことを修練することが重要だと感じます。

──今後AIの技術は不可欠なものになりますが、AI任せにするのではなく人間がAIを駆使することが大切でしょうか

そうです。例えば訴訟になった時AIは責任がとれませんから(笑)、最終的判断は人間がするのでAIは高度にサポートするという役目です。世界のトレンドとしては実現の方向に向かっていますから、日本はそこで何とかマーケットに参入できる体制をとりたいです。

現実には、大腸内視鏡検査の際に腫瘍があると自動で点滅して教える、という診断機器が製品化されています。これも一つのサクセスストーリーになりますが、自動診断に向けてのAIを作っていくのを最終的な目標にしています。

間野 博行 財務委員長

──ご趣味、リフレッシュ法をお教えください。またその良さについてお聞かせください。

──ご趣味、リフレッシュ法をお教えください。またその良さについてお聞かせください。

僕はスキーが好きなんです。テニスも若い頃やっていましたが、スキーが好きで冬はよく滑りに行きました。あとは音楽が好きでよくコンサートにも行きましたが、今は時間が取れなくてスポーツも音楽鑑賞もなかなかできない状態です。

──楽器は如何ですか?

──楽器は如何ですか?

ある程度大人になってからですが、ピアノを少しやりました。下手くそですが(笑)。そんな難しいものではなくバッハの小品程度です。バッハやスカルラッティは大好きです。特にバッハの無伴奏が好きでよくコンサートに聞きに行きました。

がんのゲノム医療が始まってからはまったく時間が取れなくて運動が出来ないので、さすがに運動不足が心配になり家にはエアロバイクを置いてありますし、オフィスにはヨガマットを置いて1日2回位エクササイズをしています。

医学・医療以外の企業や学術関係の方にも参加していただける初めての総会です!

──今回の総会で報道してくださるメディアの方々に向けて一言お願いいたします。

今回の医学会総会は、医学・医療以外の企業や学術関係の方にも本格的に参加していただける初めての総会になると思います。ここから5年先後、10年後の医学・医療のあり方を提示出来ると思いますので、そういう目で見ていただければうれしいです。

また、今回は子供向けの企画も充実しています。子供達が医学・医療を理解し夢をもっていただけるよう博覧会の会場に足を運んでいただきたいと思います。

──2022年4月27日(木)の19時から一般の方に向けたがんのお話「最新ゲノム医療を知ろう」のオンライン講演会がありますね。間野先生には「がんゲノム医療って何」というタイトルお話しいただけるので多くの方に視聴いただければと思います。WEBで申し込みをしていただければとどなたでも参加できます。お申し込みをお待ちしています。
本日は大変お忙しいところ貴重なお時間を頂戴して有難うございました。

聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

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