役員インタビュー

春日 雅人 会頭

略歴

1973年 東京大学医学部医学科卒業

1979年 米国N.I.H.(Diabetes Branch)ならびにJoslin Diabetes Centerに留学

1989年 東京大学医学部第三内科学講座 講師

1990年 神戸大学医学部第二内科学講座 教授

2004年 神戸大学医学部附属病院 院長

2008年 国立国際医療センター研究所 所長

2012年 国立国際医療研究センター 総長・理事長

2017年 日本医療研究開発機構(AMED)プログラムディレクター(ゲノム医療)

2018年 公益財団法人 朝日生命成人病研究所 所長

桜満開のこの季節、いよいよ第31回日本医学会総会本番の日が近づいてまいりました。役員インタビューの総まとめとして会頭の春日雅人先生のお話しを伺います。

第31回日本医学会総会会頭の責務を引き受けるにあたり

春日 雅人 会頭

──本日はよろしくお願い申し上げます。

──本日はよろしくお願い申し上げます。

よろしくお願いいたします。

──まず、さかのぼること5年前に会頭をお引き受けになった時のお気持ちをお聞かせ願えますか?これだけ大きな規模なので相当のお覚悟をもって臨まれたのではないでしょうか?

──まず、さかのぼること5年前に会頭をお引き受けになった時のお気持ちをお聞かせ願えますか?これだけ大きな規模なので相当のお覚悟をもって臨まれたのではないでしょうか?

ずいぶん前になりますが、中尾先生が会頭をされ、高久先生が準備委員長だった第22回の時に幹事を務めました。その時に、規模やステータスが並外れて大きく身の引き締まる思いがいたしましたが、その経験がありましたので今回はあまり抵抗なくお引き受けすることができました。

──規模感などは経験済みだったのですんなりと準備に入られたわけですね。
ではテーマの設定についてお伺いいたします。「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」というタイトルをお決めになった経緯について教えてください。

会頭代行を務めておられる宮園先生と準備委員長の門脇先生と相談して、これからの医学と医療を考えていくにあたり、“ビッグデータの活用”は基本的なものになると自然の成り行き的に考えました。それを組織委員会でおはかりしましたら、語句の使い方に少し論議があっただけで満場一致で決まりました。

ただ、決めたのが5年前ですから、その5年間に世の中の考え方が進み、『ビッグデータ』という文言も、サブタイトルの『豊かな人生100年時代』という言葉も日常的に使われるようになり、より身近なテーマになったような気がします。

第31回日本医学会総会の準備期間と重なるCOVID-19との闘い

──運営は組織委員会が中心となって行われてきたということですが、人選や役割についてお聞きします。

主務機関は都内13 の医学部のある大学と4つのナショナルセンター、そして東京都医師会から構成されています。

組織としては、会頭・副会頭6人・準備委員長と各委員会の委員長10 人・幹事長・顧問・参与から構成されており、副会頭は会頭を補佐し、準備委員長は会頭指示の下、会全体の運営に細部まで目を配り、委員長には各委員会の立案と実行をお願いしました。

副会頭は企画の立案のみならず、展示の出展募集においても、登録者数の増加を図る依頼に際しても大変大きな力を発揮してくださいました。また4月20日の開会記念特別講演会に披露される「健康社会への宣言 2023東京」の立案もしてくださいました。

その他にメディアアドバイザリーボードと勤務医アドバイザリーボードも組織して、顧問や参与の先生方と同様、幅広い知見を頂戴しています。

──組織が動き始めたのと時を同じくしてCOVID-19が出現し準備に困難を極めたのではないでしょうか?

仰る通り、対面での組織委員会を4回は実施できたのですが、それ以降はオンラインの会議を余儀なくされました。オンラインではなかなか細かい意思疎通が出来ず、隔靴掻痒の感があり心配もいたしました。一時期は事務局運営メンバーにも在宅で仕事をしてもらったり、交代で出勤したりと工夫を必要としました。これは全世界共通の事態でした。

反面、会場に出向く時間的ロスがなかったので、数多くの会議に出席できたことで共通認識は高くなりました。それと、紙ベースでの資料の開示ではなく、資料を画面上で共有でき、その場で修正を行うことなども容易になり、コピーの手間や送付などの費用も削減できたことは利点になりました。

──COVID-19は学術講演の開催方式にも影響をあたえましたね。

そうですね。多くの学会が対面での開催が難しくなり、オンラインでの開催となりましたが、やはり実際に会場に足を運び、直接意見を交換した方が有意義だという声を聞きます。本総会ではハイブリッド方式を取り入れますので、対面での参加を望む方は実際に会場に足を運ばれて臨場感をもって聞かれたら良いし、距離や時間的な制約のためにオンラインで参加した方が便利な場合はWEB参加をしていただいたら良いと思います。

──その他、新しい勉強のツールとしてオンデマンド方式も取り入れたと聞きますが。

聞きたい講演が同時刻の別会場で行われた場合、あとで聞きなおすことが可能ですし、繰り返して聞くことも可能であるという観点からは大変有用な方法です。

ただ、演者の心理的ご負担が増えるのではないかと少し気になります。ですので、講演者の方々にはあらかじめ了解を取ることは必須ですし、スライドなどもすべては公開しないということも出てくると思います。大事な研究成果が無断で流出することを防ぐ上で、慎重に対処しなければならないことだと考えています。

学術講演のテーマについて-5つの柱を中心に

春日 雅人 会頭

──講演のお話しが出ましたので、今回の学術講演のことを伺います。

学術講演に関しては学術委員長の南学先生が委員の方々と共に魅力的なプログラムを構成してくださいました。
5つの柱

  • ビッグデータがもたらす医学・医療の変革
  • 革新的医療技術の最前線
  • 人生100年時代に向けた医学と医療
  • 持続可能な新しい医療システムと人材育成
  • パンデミック・大災害に対抗するイノベーション立国による挑戦

を設け、各演題を分野別に配分して、聴く方が選択しやすいようカテゴライズしています。どの講演も非常に魅力的だと自負しております。

また、顧問や参与の先生方からいただいたアドバイスも参考にして、会頭特別企画を設置しました。

ビッグデータやCOVID-19など医療の方向性を示す演題を選定し、これらのセッションの一部については一般の方にも聞いて頂けるようにしました。

──今回は総会史上初めてとなるU40委員会やダイバーシティ委員会の設置が挙げられますね。

これまでの総会では若手の参加が少なかったのですが、これら若手の医師には医学研究、診療でも次代を担っていただかなくてはなりません。専門分化している医療の現場では、この機会に横断的な勉強をしていただくのも目的の1つです。「U40の先生方にはどんなプログラムに興味を示してもらえるか」という視点で討議していただき、それについて南学学術委員長などとディスカッションしてプログラムを作りました。

ダイバーシティに関しては、当初は「男女共同参画」という名で始まり、世界や日本での女性の進出をテーマに演題を考えていく中で、ハンディキャップをもつ人などにも広がり、委員会名もダイバーシティに変更しました。今回は座長・演者ともに女性が従来よりも大幅に増加しています。ダイバーシティ推進委員長の大野先生が頑張って下さっています。

──今回の総会の大きな特徴として、一般市民が参加できる企画が多いですね。

医療は医療従事者だけではなく、当事者である患者側である方たちの理解と協力で成り立つものです。そのことを強く感じますので、学術講演も一般の方々に門戸を開けています。

11の市民公開セッションがあり、人生100年時代を生きるための参考となるような、がんや、COVID-19に代表される感染症、その他の多くの講演が企画されました。これらのセッションは事前申し込み制ですが、大勢の希望者に申し込んでいただいています。

── 一般の方々も多くの勉強ができるよう配慮されていますね。
ほかに、今回は音楽のイベントが数多く盛り込まれています。

そうなんです。

開閉会式にはコンサートの企画がありますし、21日午後からの講演に先立ち、箏(こと)の演奏もあります。

その中でも圧巻は、20日に開会記念イベントとして開催される「開会記念 特別講演会・市民公開講座」です。『デジタル革命と未来の医療』に関する講演やパネルディスカッションのあと、オペラコンサートを開催します。このコンサートでは日本を代表するテノールとソプラノ歌手の方がピアノの伴奏に乗せて多くの曲を歌ってくださることになっています。この企画にあたっては、準備委員長の門脇先生が聴きに行った会場であまりの素晴らしさに即座に出演交渉したという経緯があります(笑)。

5000名が入場可能な東京国際フォーラムホールAでの開催です。良いチャンスなので是非聴いていただきたいと思います。

──それは素晴らしい! 体の健康、心の栄養ですね。一般の方にも広く参加、ということでは展示部分にもそれが色濃く出ているようです。

そうです。従来のいわゆる学術展示会だけではなく、広く理解をいただくために、分かりやすくかみ砕いた一般向けの展示を【博覧会】と名付け、展示委員長の青木先生を核に多くの委員の方が様々な企画を立案してくださいました。

今回の大きな特徴に、講演会場と展示会場が一体型であるということがあげられます。東京国際フォーラムを中心に丸の内・有楽町エリアで開催されるので、どなたでも自由に見て回ることができます。家族で参加できるよう幅広いテーマで企画していますし、スタンプラリーなどにも参加していただき、記念品も用意してあります。

内容も学術講演と連動させ、例えばがん治療のゲノムやCOVID-19など、関心の高いテーマを実際に目で見ることができます。お一人でも、友人やご家族でいらして語り合いながらでも、気軽に見ていただきたいです。平日は夜8時まで開催しており、仕事帰りにも立ち寄りやすいよう設定しています。

展示と直接関係はないですが、記録委員長の松藤先生の発案で、主に小学校高学年を対象にした「ビッグデータと医療」という学習漫画を学研の協力で作成しました。子ども向けの会場で手に入れられるかもしれないので立ち寄ってみて下さい。ぜひご家族で読んでいただきたいです。

──総会も目前に迫り準備も着々と進んでいるということで安心しました。
長きにわたるご準備で大変ご多忙と拝察いたしますが、リラックス法を教えていただけますか?

僕は無趣味だなー(笑) 準備委員長の門脇先生はランニングが趣味と言っておられますし、ほかの組織委員の先生方も沢山趣味をお持ちで羨ましいです。僕の場合は…しいていえばゴルフですね。今はなかなか時間が取れず、気候の良い時に月1、2回行く程度でしょうか。

ここまで来られたのは、関係各位のお陰です

春日 雅人 会頭

──いろいろお話しを伺ってまいりましたが、準備を振り返って一言お願いいたします。

──いろいろお話しを伺ってまいりましたが、準備を振り返って一言お願いいたします。

COVID-19の影響が大きく、対面で会議ができなかったにも拘わらず、関係者が一丸となってここまでたどり着き、ホッとしています。

多くの機関からご後援をいただきましたし、顧問や参与の先生、メディアアドバイザリーボードや勤務医アドバイザリーボードの皆様からも貴重なアドバイスを頂きました。

何にも代えがたいのは副会頭、準備委員長、10委員会の各委員長10人、そしてそれを支えてくださった幹事長と事務局長と事務局員の皆さんの多大なるご貢献です。本当に素晴らしいチームと思います。心より感謝申し上げます。

いよいよ本番です。事故のないようすべての方々に喜んでいただける総会になるよう願っています。

──本日はお時間を取っていただき誠に有難うございました。
2年に亘り組織委員の先生方にインタビューをさせていただきましたが、すべての先生の総会にかける熱い想いがひしひしと胸に迫り至福の時間を共有させていただきました。有難うございました。

──本日はお時間を取っていただき誠に有難うございました。
2年に亘り組織委員の先生方にインタビューをさせていただきましたが、すべての先生の総会にかける熱い想いがひしひしと胸に迫り至福の時間を共有させていただきました。有難うございました。

聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

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