役員インタビュー

青木 茂樹 展示委員長

略歴

1984年 東京大学医学部医学科卒業、東大病院放射線科研修医

1985年 東京大学医学部医学科放射線医学講座、助手

1988年 米国カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校神経放射線部門研究員

1991年 東京大学医学部放射線医学講座助手

1995年 山梨医科大学放射線部副部長、同大学助教授

2000年 東京大学大学院医学系研究科放射線医学助教授

2008年 順天堂大学医学部放射線医学教室教授

歴史ある医学会総会からの発信は、正しい医療情報を広める

一般向けの博覧会は
「次世代スマートホスピタル202X」「コミュニティクリニック」「セルフケアスタジオ」の3種類

青木 茂樹 展示委員長

──総会まで1年と4ヶ月になりました。新年を迎えて、展示委員長の重責を担われ展示・博覧会の準備などで大変お忙しくしておられる青木先生にお話を伺いたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
まず展示委員長としての具体的なお仕事についてお話をお伺いさせていただけますか?

──総会まで1年と4ヶ月になりました。新年を迎えて、展示委員長の重責を担われ展示・博覧会の準備などで大変お忙しくしておられる青木先生にお話を伺いたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
まず展示委員長としての具体的なお仕事についてお話をお伺いさせていただけますか?

展示委員長として、まず全体の企画を立案し、大きな区分けとして、学術講演に参加される専門家向けの学術展示、一般向けに公開する近未来の医学・医療をわかりやすく見せる博覧会を開催することにしました。博覧会部分はテーマ別の展示を考えて3種類に分類し、「次世代スマートホスピタル202X」、それから「コミュニティクリニック」と「セルフケアスタジオ」です。これらのネーミングは委員の先生に考えていただきました。内容がわかる良いネーミングだと思います。

──展示委員長を支える展示委員の先生方も大勢参加しておられて、その部門、部門で活動していただいているのでしょうか。

──展示委員長を支える展示委員の先生方も大勢参加しておられて、その部門、部門で活動していただいているのでしょうか。

はい。それぞれワーキンググループを作り、立派なテーマ展示を企画していただいています。さらにCOVID-19や子ども企画など新しい企画を追加し、その新企画がどんどん増えるにしたがってご協力いただける企業を探すのが主な仕事です。魅力的な企画を作り、それに参加していただくという作業をどんどん広げ、立派な博覧会になっていくことを願っています。

──予想外のコロナ禍が去年今年、来年も続くことが危惧されています。対策を考えておられるのではないかと思いますが、企画の意味と体制の両面からコメントを頂戴できますか?

学術講演が開催される東京国際フォーラムの周りには種々のイベントホールなどがありますし、通勤する方やショッピングする方、また東京駅を使う旅行者等、昼間の人口が非常に多いということで、コロナが始まる前に有楽町、大手町界隈の開催を決定しました。多分、同じエリアの開催は市民展示・博覧会としては初めての試みだと思いますけれど、このコロナ禍の中ではそれが幸いしているのではないかと考えています。大きなイベントホールをどんと借りて大きな企画を実施するというのは、ある意味派手でインパクトが大きいのかもしれないですけど、小さなイベントホールをたくさん組み合わせて、有機的に組み合わせる今回の方法は、逆に言えば自由自在に大きくなれて、小さくなった部分はWeb上で、オンラインで見ていただくことなどもできます。こう考えてみるとコロナの前に考えた企画がコロナ対策になっていたということで、そこに関しては運が良かったというか、良い所でスタートしたなと感じています。

──今お話しいただいた東京国際フォーラムの周辺で展示・博覧会を一括してできるということは、来場者・参加者にとっても非常に利便性のあることですよね。ひとつの大きなセールスポイントになるんでしょうか。

はい。周辺で昼間働いている方は約30万人と非常に多いと聞いております。おそらく、特にコロナ禍の影響で、健康に関してすごく意識が高まって、知識欲も増えていると思います。そういう方々はインターネット上の情報が、本当なのか違うのかの判断が難しいことにお気づきと思います。実は、専門家でも難しい所があるわけです。

もう100年以上の歴史がある、日本で最も権威あるこの医学会総会が発信している情報ということで、それを皆さんに広められるということは、正しい情報を広める手段として非常に有効ではないかと思っています。

学術講演はハイブリッド方式
オンラインの長所を生かし、本当に知りたい情報を気軽に聞けるように

青木 茂樹 展示委員長

──学術講演はハイブリッド方式で実施され、対面式での参加とWeb参加で聞くことができるよう企画しておられるようです。展示もそのようなこともお考えでしょうか?

そうですね。展示ではプレゼンの仕方に難しい所があるので他の大きな学会のやり方を学んで、市民の方あるいはお金を払ってきていただく医療者に、オンラインのいい所を生かして色々な情報を伝えられるような企画を提供できればいいなと思っています。

人気のあるブースでは、「見たいな」と思っても説明する人に限りがあり詳しい説明が聞けない場合もありますが、そこは“バーチャル”で、専門家と1対1、あるいは特定の情報を得たい人たち・グループに対して専門の説明員を用意して、詳しくさらに質疑応答をしながら聞くことができるような場所を用意するとか・・・そういうことをやっていければいいと考えています。

──その方法は画期的なことですね。今までそういう展示はあまりなかったのではないかと思いますが。

他の学会のオンライン講演では非常に勉強になったという方が多いのですが、博覧会(市民展示)に関しては参加者にそのような印象をいただいているところがそれほど多くはないようです。従来型の展示の方がいろいろ情報を聞けて良いという意見があるので、オンラインでもセキュリティを確保して対応ができればよいと思います。

参加者に情報をいただければ、それを活用してマッチングなどもできます。特に学術展示はマッチングを行って興味がある方向を察知し、それに沿った説明員を用意し、予約して聞きに来ていただくということができると思います。今までは、たまたま同じ分野の人が3人、3グループ重なって来てしまうと全員への説明ができないですから。

“本当に知りたい情報を気軽に聞けるオンライン展示”が可能なのではないかと思って、いろいろ相談しているところです。

──このコロナ禍で特殊な事情があり企業の出展も多少偏りがあるかと思いますが・・・

2021年の初め頃から企業さんにお声がけをし始めましたが、やっぱりコロナが始まってから半年、いや1年くらいは先行きが見えなかったので前向きな意向を伺うのが難しかったです。最近は先が見えてきましたし、医療への関心が高まったので協力を考えてくれる企業さんが増えてきました。おそらく今のままだとコロナへの関心は維持され、健康に関しては気をつけながらやっていく必要があるなということを、皆さんがずーっと考え続けていくんじゃないかなと思います。企業さんもそれに対応して何か情報を発信していく必要があるので、うまくその方々とコラボして正しい情報を出してあげられればいいなと。

──今まで展示会は医療に特化した企業が多かったように思いますが、最近は業種も拡散し、いろんな業態の方が医療に関心をお持ちになるようになっているのかなという気もしますがどうでしょう。

そうですね。遠隔医療などがありますのでデジタルDXもありますけど、コンピュータ関係というか通信関係の方々も興味を持っていただいていると思います。健康維持のためのスポーツ医療とかスポーツ、それから食事、その関係の方々は今までもかなり関わってきていただいたと思いますけども、さらに加わってきてくれることを期待しています。

──100年を楽しく、100年を健康にというサブタイトルがありますけども、いろんな業界の方が協力し合って「100年を支えていく」という感じの博覧会になるような気がいたします。

そうですね。今回は勤めている方が多い場所、また東京駅に近いということで、日中は年齢の高い方、土日はお子さんたちが多くなり、平日の夕方などの帰りがけや時間が空いた時などにビジネスマンの方も来ていただければいいなと考えています。

できれば50万人位の方々に来場していただきたいです(笑)

AI+放射線科に、注目を

──広い年齢層を対象に企画されているということですよね。ありがとうございました。
ここで少し先生のご専門を易しくお話をしていただきたいと思います。先生のご専門は放射線医学で、ベルツ賞もお受けになり日本の放射線医学をリードしていらっしゃいました。放射線医学は進歩も非常に著しく、またその発展が医療に大きな貢献をしています。

そうですね。この40年間くらいでCT・MRIが著しく発展しました。

考えてみると体の中が見えるということはすごいことで、第1回のノーベル物理学賞を受けたレントゲン博士が発見してから数年のうちに全世界で実験が行われ、医療への応用も速やかでした。CTに関して言うと、最初の「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ラジオロジー」という専門誌へのCTの発表からわずか5年、6年で日本にCT装置が入ってきて、80年代にはもうすべての大学に入るぐらいになりましたし、MRIもわずか数年遅れて普及しました。体の中、特に骨に囲まれた脳の中などは触診ができないわけですよね。覗く方法も全くなかった。お腹はまだ触れば腫瘍がありますとかわかるけど、頭はもうどこにあるのかさえわからなかったのがCT・MRIを撮ればわかるようになりました。画期的な変化が20世紀後半にあったと思います。このあたりで最も進歩したのは何かというと、画像診断だと思います。特にCTにおいては1スライス撮るのに1秒かかっていたものが320枚撮れるようになるまで16年位しかかかっていないんです。患者さんの「息を止めておく」負担が劇的に減り、情報は飛躍的に増えました。その情報がコンピュータの進歩に伴い、全部デジタル化しPACSというシステムを使ってどこででも情報が共有できるようになりました。

──CTなどの装置やその表示システムの進歩に伴い量が増大することによって、放射線医の読影の負担というのはどうなんでしょうか。

運がいいことに、2015年くらいからAIの第3次ブームが始まって、画像認識の進歩が著しいです。特に顔認識は皆様もご存じと思います。医用画像処理などでもAIを使ったものが非常に進んできました。例えばAIに動脈瘤をたくさん見せると、人間と同じように、たくさん見せることでより学びが進む、ディープラーニングという方法で学んで、動脈瘤を見つけられるようになります。従来のように、専門家が「特徴を抽出して、こういう風にパラメータ変えましょう」とやっていた方法をやらなくても見つけられるようになりました。AIがやると早いし、色々な分野のものを作りやすいということで画像に関しても応用されるようになりました。

──これからはAIをいかに上手に使いこなすかということが放射線科医に要求されることの一つになるかもしれないですね。

まったくその通りです。

──これから医師になる人、これから放射線科を目指す人に何か一言お願いできますか。

放射線科は全身を扱い、放射線専門医を3年で取るとそのあと治療と診断に分かれます。まず3年です。その間に治療に興味があったら治療に行くかもしれないし、診断に興味があったら診断に行ってもいいように最初の3年間のプログラムは共通になっています。

ゲノムもすごく魅力あると思いますが、物理が好きな人は物理学的なところ、例えばCTではフォトンカウンティングCTも興味がわくと思います。MRIも非常に物理的な要素が強いので、まだまだ発展する余地があり面白い分野といえます。

青木 茂樹 展示委員長

──他の先生方にもご趣味について伺っておりまして、結構皆様楽しそうにお話してくださるんですけど、先生はいかがでしょうか?

──他の先生方にもご趣味について伺っておりまして、結構皆様楽しそうにお話してくださるんですけど、先生はいかがでしょうか?

今は全然やれないんですけど、学生の頃、研修医とかちょっと時間がある頃ぐらいまでは、10年間位くらいですかね、合唱をやっていました。

──そうなんですか。パートはどこですか?

──そうなんですか。パートはどこですか?

テナーです。声が高いので。暇になったらやりたいなと思っているんですけど、しばらく歌っていないと声が出なくなるんですよね、きっとね。

──そうですね、声楽は声帯訓練しないと出にくくなるみたいですね。他には何か、音楽鑑賞とか。

──そうですね、声楽は声帯訓練しないと出にくくなるみたいですね。他には何か、音楽鑑賞とか。

そうですね、音楽鑑賞はまだ続けていますけど。ウィーンで学会があるときはオペラに行きましたね。外国ではリーズナブルな価格で聴けますので楽しみしていた方が多いように思います。そこでは僕よりちょっと年上の教授だった先生たちとよくお会いできたりしました。

──何かスポーツはされるんですか?

スポーツしないのでこういう体型になっているんですよ。なんかしなきゃいけないと思うんですけど(笑)時々ラクーアに行って泳いだりするくらいですかね。

学術講演会展示・博覧会の同一地区開催は初

──展示・博覧会は出展企業があって初めて成り立つものですが、出展される企業に向けて何かメッセージはございますでしょうか。

日本医学会総会の開催はこれまで学術講演会と展示が離れた場所で行われていましたが、今回は同地区での開催のため非常に利便性が高く、学術講演に参加予定の35,000人の医療関係者が展示会場を見学する可能性が大きく、情報発信力は非常に強いと思います。

出展料も土地の高い場所にしてはリーズナブルに設定し、出展していただきやすいように各種のプログラムを考えてあります。コロナがどうあろうと粛々とオンサイトオンラインをやれると思っておりますので、ご協力いただいて、これからのオンライン開催のベースになるようなものを示したいです。

──最後に広報的な視点から、メディア関係にお願いしたいことはなんでしょうか?

そうですね。やっぱり4年に1回の非常に権威ある学会ですから、それを有効に、今溢れる正しいか正しくないかわからない情報を皆さんに整理していただけるような発信に協力していただければと思います。

──お忙しいところお時間をいただき、色々お話を伺いありがとうございました。

聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

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