役員インタビュー

齊藤 延人 総務委員長

略歴

1987年   3月 東京大学医学部医学科卒業

1989年   9月 米国国立衛生研究所留学

2000年 11月 群馬大学脳神経外科講師

2002年   7月 群馬大学脳神経外科教授

2006年   2月 東京大学脳神経外科教授

2015年   4月 東京大学医学部附属病院長

2019年   4月 東京大学医学部長

2021年   4月 東京大学理事・副学長

最先端・最前線の医療を啓発する場
どうぞ楽しみに来てください

総務委員会は“なんでも屋さん”

齊藤 延人 総務委員長

──本日はよろしくお願いいたします。
先生は総務委員長としてあらゆることの面倒を見なくてはいけないお立場で、雑多なことも多くて大変かと思います。まず、総会の魅力や役割をお話しいただければと思います。

──本日はよろしくお願いいたします。
先生は総務委員長としてあらゆることの面倒を見なくてはいけないお立場で、雑多なことも多くて大変かと思います。まず、総会の魅力や役割をお話しいただければと思います。

総会は医学会の力を結集する“シンボル”ではないかな、と思っています。実は、私はこれまで医学会総会には積極的には関わっていなかったんですけれど、2011年矢﨑先生が会頭の時、学術委員長の桐野先生の下でその幹事をやらせていただきました。その頃は、幹事が主に動いて、当時永井先生が準備委員長で、各学会からご意見をいただいてそれを集約するというスタンスでプログラムを作っており、そのお手伝いをしたのがすごく印象に残っています。ただそのあと、残念なことになってしまいましたが…。(※震災のため縮小)

ですので前回のリベンジ、ではないけれど(笑)、そういう意味でしっかりやらせていただこうと思っています。

──第28回は学術委員会幹事、今回は総務委員長ですが、総務委員会の役割について教えていただけますでしょうか?

春日先生から、とにかく“なんでも屋さん”ですからヨロシクね、って言われているんです(笑)。それは間違いないと思います。

一つは会場の確保、これが一番大きい。それから専門医の単位関係。あとは製作物や記念品、宿泊、輸送。タイミングはそれぞれですが、会場は確保できていますので、今は製作物・記念品を煮詰めてきているところです。ただ、宿泊・輸送、コンベンションがコロナで難しい状況になってきてしまって。旅行会社に提案を出していただくアクションを始めたところですが、予測がつかないところがありますね。

──今は少し落ち着いていますが、1年半後は見通せない状態で、マスクの生活はしばらく続くと予想されますね。

この年末くらいまでの間、どうなるのか今のところ予想ができませんね。第6波が来ればしばらくこの生活が続くでしょうし、落ち着けば気持ちも上向きます。

──製作物についてはいかがでしょうか?

前回の総務委員会でいい考え方が出ました。今のカーボンニュートラルや地球のことを考えようという中において、これまでのようにプラスチック製品を出して、すぐ捨てられるのは良くないので、そうならないものを選んでメッセージ性を出していくのはどうかというものです。

コングレスバッグは総務委員の森田 明夫先生にご紹介していただき、デニム素材のバッグが候補にあがっています。丈夫だし時流にあっているのではないということで有力です。考えなければいけないのが名札ですよね。あれは、ビニールですよね? 昔みたいに紙を差し込むのはどう? と言ったら、若い担当者が「それなんですか?」って(笑)。女性は使いづらいだろうし、なにかうまいこと考えられないかな。

──社会に貢献できる、新しいもの、という意味で面白い分野ですね。

いいアイディアがあったらご意見を伺いたいものです。

──会場の手配は大体終えられているとのことですが、ハイブリッド開催の検討されており、来場数等の見込みを立てることがとても難しく苦労なさっていると思うのですが。

そうですね。オンラインでの聴講も取り入れるということは、従来なら参加できなかった遠方の方々や診療現場を離れられたかった方々にも気軽に参加していただけるという大きなメリットがあります。しかしその反面、登録が進むまでリアルで参加する数が読めなくて、講演会場のサイズが中々決められない。また、コロナ感染予防の観点から、会場にゆとりを持たせる必要があるなど、考慮しなければいけない問題がたくさんあります。それと当日配布のコングレスバッグやプログラムを送付するとなると輸送料が発生することも考えなきければならない事項です。

何万回も縫ったからといって手術が上達するとは限らない

齊藤 延人 総務委員長

──ここで、先生ご自身のご研究や診療等についてお聞かせいただけますでしょうか? 脳外科の権威でいらっしゃり、臨床・教育・研究で長年医療界をリードされてきました。

医学では、病気の原因を解明する、治療法を開発することは大きな柱ですので、日々いろんな先生方が研究されています。特に外科系に関しては、もうひとつ重要な外科の技術を伝承することがあります。トレーニングを受けないとできないものですし、次の世代にしっかりと伝えていくことも大事なことです。

脳神経外科は他の外科に比べて比較的新しい分野で、そろそろ60年、僕が生まれた頃に脳神経外科教室ができたんですね。やっぱり難しい領域なので、匠がいて、技術が必要で、「その人でなければだめ」という状況は良くないので、高いレベルのものを広く普及していきたい。日本の医療はたくさんの病院が各地にあって、どこでも高いレベルの医療が提供できる、アクセシビリティが良いところがありますので、脳神経外科も高いレベルのものが全国各地でできるようにというのが大事だと思いますね。

もう一つ、手術教育ということでは、僕らが一生懸命になって獲得した難しいことでも、次の世代にはスタンダードになるはずなので、そのスタンダードをどうやって若手に伝えていくことができるか、それはちゃんと言葉で記述できる状況に持ち込むことが大事だと思ってるんです。

留学時に、外国の方がナイフとフォークのようにピンセットを持って動物の手術をしているのを見て驚きました。学生さんや研修医には、箸を使う文化を持っている日本人は手術の基本的技術は既にマスターしている、とお話ししています。手術技術の向上のために、左手で箸を持ったり、何万針も縫う訓練をしたりする人がいますが、多少はやっても、ある程度から先はどうかな、と思ってます。例えば、スケートだったら4回転ジャンプをするような技術は求められていません。そんなところで勝負をされると危なっかしいです。それよりも、基本的な滑り方をマスターしたら、どこを滑ったら良いのかその道順を知っていることが重要だと思うんです。

そのような技術、というよりは知識の伝承のために、3D-CGを使用して手術をシミュレーションする方法を研究開発しています。例えば、脳の深いところを手術するのに前頭葉と側頭葉を分けて手術するんですけど、これまではこのシミュレーションが困難でした。どこまでが前頭葉でどこが側頭葉かコンピューターでは判別できなかったんです。今はAIがどんどん進んで、コンピューターが自分自身を鍛えてくれて、前頭葉と側頭葉の間を自動的に開くことができるようになったんですね。

異分野融合で新しい分野が開けることがある

齊藤 延人 総務委員長

──医学会総会に若い方になるべく来ていただきたいですね。

──医学会総会に若い方になるべく来ていただきたいですね。

医学の幅広い分野の中から一同に集まって、最先端なり考え方を議論する場です。狭い領域に閉じこもっていると進歩がないので、ちょっと違う考え方、違う領域の話を聞くというのはすごくいいんじゃないでしょうか。血管吻合をとってみたって、脳神経外科のやり方があって、心臓外科はどうしている、血管外科はどうしている、とか、どんな機械をつかっているかを見るのでも参考になる。異分野融合は研究でも、違う領域の方々が集まった時、新しい分野が開けることがありますからね。

──チーム医療が叫ばれていますし、いろんな分野のことを知識として共有しておくのは大事ですね。

──チーム医療が叫ばれていますし、いろんな分野のことを知識として共有しておくのは大事ですね。

特に、今回のテーマ「ビッグデータ」はいろんな領域で進んでいくわけですよね。今、東京大学の副学長として自分の学部以外の仕事をしていると、「地球環境」「カーボンニュートラル」がすごく大きな目標の一つになっていることがわかります。

もう一つ「ジェンダーイクオリティ」も大きなテーマですね。医学系は女性が多いですからアドバンテージがあります。例えば、東大では全学の入学生のうち女性は2割いくかいかないかくらい。理系はもっと少ない。しかし、医学部を全国レベルで見ると、学生の半分近くが女性です。

「カーボンニュートラル」という題目が立って、それが世の中の動きになるぞ、となれば、みんながそこを研究して、講座も新たに作り直す。理系だけではなくて、文系も社会科学もそうだろうし。そういうフレキシビリティはすごいな、と思ったんです。医学の分野とは違うなぁ、と。医学は細分化でしょ? 既存の診療科を捨てる訳にはいかない。治るようになればいいんだけれど、脳神経外科にしろ、癌にしろ、産婦人科にしろ、病気自体があるから捨てられないじゃないですか。

一方で、研究もどんどん進んで知識や技術が増えると、ひとりが全部するには無理がある。それで、細分化してきました。その集合体が医学会なんですよね。今度逆に総合診療、全体を診る人がいないという話になったりもしていますが、僕らは今の世の中の流れに遅れないようにしなくちゃならない。しっかりと我々の分野でも先導していく必要があるんだろうと思います。それを考えるのが医学会総会の意味でもあるのかもしれません。

──リフレッシュ法やご趣味についてお聞かせください。

だいたい「NETFLIX」って言っています(笑)。時間が不規則ですから。週末にオンラインビデオをとか、映画を観たりしてリフレッシュしています。サイエンスものや歴史ものが好きですが、YOUTUBEで僕らの若い頃の歌とか聴くと、無心になれますよね。楽しめるし、涙を流すような映画を見ると、俺って汚れたな、って、時には心洗われたような気分になることもありますよね(笑)。

ただし、最近の医療もののドラマは見ないようにしています。現実離れしていて見るに堪えなくなるからです。例えば「私、絶対に失敗しないの!」という人が主人公のドラマがありますが、医療安全の観点からはこういう人が一番危ないですよね(笑)。

──最後にメッセージをお願いいたします。

4年に1回の医学のお祭りで、現在の最先端・最前線の医療あるいは医療にかかわる関連分野の講演があり、それを展示などで工夫しながら皆さんに啓発する場ですので、どうぞ楽しみに来てください。東京駅周辺で行います。

インタビュー日:2021/10/22
聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

ページトップページトップ