役員インタビュー

天谷 雅行 副会頭

略歴

1985年 慶應義塾大学医学部 卒業

1989年 北里研究所病院皮膚科

1989年 米国国立衛生研究所国立癌研究所(NIH, NCI)皮膚科留学

2005年 慶應義塾大学医学部皮膚科教授

2013年 理化学研究所生命医科学研究センターチームリーダー(非常勤)

2017年 慶應義塾大学医学部長

2021年 慶應義塾常任理事

医学者・科学者がプロフェッショナルとして意見を発出し、交換する医学会総会
 「2023年」という時代を切り取った最先端の情報が共有・ディスカッションされます

ポストコロナの象徴となるような学会のあり方を提示したい

天谷 雅行 副会頭

──本日はよろしくお願い申し上げます。
まず、医学会総会を開催する意義についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか?

明治35年から途切れなく続いている伝統ある医学会総会を次の世代へ繋いでいくことは非常に重要だと思います。医学において専門領域の進化から、医学そのものの持つ多様性はかつて見られないほどになっています。医学に対する期待がこれほど大きい時代は今までなかったのではないでしょうか? COVID-19のこともありますけれど「Health」という領域の可能性・発展性は無限のように思います。医学会総会は、みんなで「Health」を考えるという素晴らしい機会だと思います。

──人生100年時代と言われ、健康に長生きしたい……「Health」に関心が高い今ですが、ポストコロナの時期に開催されるということで特別なお考えや思いはありますか?

今回のテーマである「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」は日本でパンデミックが始まる前に選んでいますが、ポストコロナにおいても大変重要なテーマです。感染症という未曾有の災害・脅威を突きつけられていますが、人類の歴史でみれば何回もチャレンジを受けてきたわけです。私たちの世代はしばらく平和な時代が続いていたのでこれほど大きなことになるとは想像していませんでした。

COVID-19を起こす新しいウイルスが1つ地球上に生まれただけでこれだけ生活様式とか人々の考え方や行動が影響されてしまったわけで、大きなチャレンジだと思います。“喉元過ぎれば熱さを忘れる“ではなく、これを大きなきっかけとして感染症に対する地球の問題・環境も含め、考え方を皆で共有し乗り越えていかなければならないと思います。

今回の医学会総会もポストコロナの象徴となるような学会のあり方を提示する運営になると思いますので、そこに向けて組織委員会・関係者の方々の叡知を集めて構築しています。

──このような難しい時期の医学会総会ですが、副会頭としての抱負をお聞かせください。

副会頭には、東京大学、東京医科歯科大学、慶應義塾大学、慈恵大学、順天堂大学、東京都医師会の方々が選ばれていますが、まさに東京にある国立私立大学、医師会がワンチームとなって“オール東京” で、春日先生を会頭とする医学会総会を盛り上げていればと思います。

また、私は臨床をやりながら基礎研究をしていた立場なので、Physician Scientistの観点からも貢献できる提案をしていければと思っています。

若い研究者・医療従事者へ――自分の感性を信じ、それを磨くことが大切

天谷 雅行 副会頭

──ここで少し、先生のご研究について教えてくだい。
自己免疫疾患、天疱瘡などの研究においてトップランナーでいらっしゃいますが、そのお話しを簡単にお聞かせいただけますか?

1980年後半、自己免疫疾患の免疫が標的とする抗原がわからず、「天疱瘡(皮膚・粘膜に対する抗体ができて水疱ができる疾患)の標的タンパクを同定する」というプロジェクトを始め、遺伝子を同定することができました。

このことによって、天疱瘡という疾患が、「通常はウイルスや細菌を排除する方向で働くIgG抗体が、細胞と細胞を接着させるデスモグレイン3(Dsg3)を攻撃し、表皮細胞がバラバラになり水疱ができる。」という病態がわかりやすく理解できるようになりました。これらは留学中のことでしたが、日本へ戻った後は、デスモグレイン組み替えタンパクを作成し、血清診断薬を開発しました。この診断薬は、現在世界中で使用されています。また、モデルマウスを作って、どうして自己免疫状態になるかの研究も続けました。

──先生のこれまでのご経験から、若い研究者や医療に携わる人たちへのメッセージをお聞かせください。

患者さんを日常診察していると様々な現象や病気が目の前に出現します。その中で面白いと思う現象があったら、とことん追求することです。何を面白いと思うかは、自分の感性です。自分の感性を信じ、自分の感性を磨くことが重要です。

──お忙しい日常の中でのリフレッシュ方法はございますか?

コロナ禍なのでジムにも行きづらいので、散歩がいま自分の生活ではリフレッシュのひとつになっていますね。

会食ができなくなり、直接会ってゆっくり話すことはできないですが、Zoom等で話すことはできます。やはり、人と無駄話をしている時はいいですね。無駄の中に文化があるような気がします。特に異分野の方々、若い人たちと話していると、元気をもらえます。

あとは、Netflixとかで、ドキュメンタリーをみるのも好きです。1人の人がどういう感性で何を感じて生きているのか、4〜5年追っている番組がいいですね。何気ない言葉、さりげない仕草に深いメッセージを感じ取るときがあります。

読書もノンフィクションです。人がその時に何を感じ、何を考えているのかに“触れる”ことが刺激になります。人が好きなのかもしれない(笑)

いろんな方のいろんな価値観でいろいろ思う、そこに触れることがリフレッシュですね。

一般の方へ ぜひ医学・医療を身近なものとしていただきたい
メディアの中にも科学・医療のプロフェッショナルが育ってほしい

天谷 雅行 副会頭

──今回の医学会総会は、学術ではU40や男女共同参画等委員会などの新しい試みがありますが、一般展示「博覧会」でも「Health」をテーマにした展示を企画しています。一般の方にも参加いただくためにメッセージをお願いします。

医学・医療はなかなか分かりにくいイメージが強いと思います。今起こっていること、医学・医療の中で大切なことを、できるだけわかりやすくする展示等の企画をたくさん用意しているので、是非身近なものとして触れていただいて、一人ひとりの「Health」を改めて大切にする機会になってもらえればと思います。

──取材していただくメディア向けにメッセージなどありますか?

今は、かつてないほど医学や科学の意義・意味が問われている時代なので、メディアの役割はものすごく重要だと思っています。

一昔前、科学者は科学者組織の中で認められれば、ある意味一般社会と関係なく過ごせていました。しかし、今は、科学の意義、意味を、一般の方々へわかりやすく伝えることがとても重要になっています。その際、私達がわかりやすいと思って表現しても決してそうなっていないので、メディアの役割は大きいです。メディアの方に難しい内容を正しく、正確に、わかりやすく伝えていただくことは大切です。医学会総会で発表されたもの、展示されたもの、膨大な情報が提供されますが、それらを正しく社会に伝えて欲しいです。そして、メディアの中でも科学・医学のプロフェッショナルがもっと育ってほしいです。

──若い方に医学会総会へ来ていただくには?

医学会総会は、医学者・科学者がプロフェッショナルとして意見を発出し、交換する場です。最先端の様々な情報が共有されディスカッションされ、2023年の時代を切り取った様々な医学が観られるので是非参加していただきたいですね。

複数の学会に沢山行かなくても医学会総会にはあらゆる分野が集まっているので、その期間を思う存分楽しんでほしいです。

──貴重なお話を沢山お聞かせいただき誠に有難うございました。

インタビュー日:2021/08/17
聞き手 長瀬 淑子(事務局アドバイザー)

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